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計測機

提供: アナログ回路研究資料
2023年2月27日 (月) 10:14時点におけるWebmaster (トーク | 投稿記録)による版
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巷には、アナログ/ディジタル問わず、電子回路を扱う際に使用する様々な計測機がある。以下は管理人の実験室に揃えた計測機の一部で、重要な順に列挙している。

最も基本的かつ必須の計測機はテスタである。部品や回路の良否判定/動作確認でテスタを使わない場面は皆無である。故に、プロ/アマチュア問わず、電子回路を扱う者は「テスタだけは良いものを選ばないと、電子回路を扱う際にフラストレーションが溜まり、激しく後悔することになる」ことを知り、やがてはテスタについて何かしら一家言を持つに至るのだが、これは已むを得ないことなのだ。

なお、管理人は、精度も使い勝手も重要だが、故障しても自力で修理・校正できることが何より重要だと考えている。即ち、購入機種選定基準は「汎用のディスクリート部品で構成されていること」を大前提とし、専用ICやLSIを必要とする計測機は可能な限り購入を避けるか、已むを得ない場合は同じ機種を複数保有しモスボール化して保管することを心掛けている。

名 称
(別名)
所有型番 (メーカ) 機 能
コメント
テスタ
(回路計・マルチメータ)
CX506a (三和電気計器)
CD771 (三和電気計器)
3201 (横河電機)
635HV (Bach-Simpson)
YX-361TR (三和電気計器)
Model 8 mk 5 (AVOmeter)
Model 8 mk 6 (AVOmeter)
GBW-361TR (GBW)
DE-200A (DRE EE)
3478A (Hewlett-Packard)
プローブで触れている2点間の電位差Vや電流Iと、直流電圧による抵抗器の抵抗値Rを計測する。トランジスタの直流電流増幅率hFEやコンデンサの静電容量Cを計測できる機能が附属している機種もある。
計測値の表示方法として、昔ながらのアナログメータ(実態は高精度直流電流計)による指示のものと、計測値を計算後にニキシー管/蛍光表示管/7セグメントLED/液晶等でディジタル表示させるものがある。アナログテスタの内部は誤差±1%以下の高精度抵抗器による分流回路と倍率器の塊なので計測値はリアルタイムに指示され突発的な変化や周期的な変化も視覚的に検知できるものの指示値の読取誤差が発生する、ディジタルテスタの内部はオペアンプとコンパレータから出力された電圧をA-D変換後に基準値と比較・計算するLSIが動いておりアナログテスタと較べても桁違いに高精度な計測が可能なものの計算を伴うため3〜5秒ほどのタイムラグが発生しリアルタイムな計測には不向き等、両者には一長一短あるため、両方[1]を複数所有していると何かと便利だ。管理人は小学生時代から三和電気計器株式会社製をメインで使っており、それは40を過ぎた今でも、アナログでもディジタルでも変わらない。
3201は国内で唯一、〄規格「JIS C 1202 回路計」でA級[2]のちAA級に適合しており、本体に〄マークの貼付が許された機種で、株式会社横河電機製作所(当時。現在は横河メータ&インスツルメンツ株式会社)製のアナログテスタである。電圧回路の内部抵抗が直流100kΩ/V、交流10kΩ/Vと高く、測定値表示用アナログメータが10µA(9kΩ)と高感度で、故に抵抗値計測用電源が全レンジに渡り単一電池1本のみで済み、応答性も非常に良いのだが、メータカバーがプラスティック製であるにもかかわらず帯電防止処理が無いため静電気に弱く[3]、特に冬場での使用は注意を要する。手許にある製造年ラベルから遅くとも1972年より製造されている超ロングセラーで、この時代の電子機器のご多分に漏れずマニュアルに回路図と部品表も明記されているため、いざとなれば自力で修理可能という素晴しい製品なのだが、残念ながら2017年1月18日に販売終了となった。過去には"回路計 JMU-Q1"という物品番号で、陸上自衛隊をはじめとする防衛庁(当時)へ、全体をオリーブドラブで塗色した防滴性[4]アルミダイキャストケースに、直流6kV・12Aまで測定できるよう倍率器[5]と分流器を付属、一体化させたものが装備品として納入されていたことでも有名である。付属品も全て揃った2セットのJMU-Q1 [6]含め、管理人は5台の完動品を所有している。
635HVはカナダのBach-Simpson Ltd.(当時。現在はアメリカのSimpson Electric Company)がかつて製造したアナログテスタである。電圧回路の内部抵抗は直流20kΩ/V、交流3kΩ/Vと中程度、測定値表示用アナログメータも50µA(2.7kΩ)と中程度、故に抵抗値計測用電源も単一電池1本([×1Ω]・[×100Ω]・[×1kΩ]レンジ用)に加え単三電池4本([×10kΩ]レンジ用)が必要なものの、メータカバーがガラス製のため静電気に強く、アナログテスタでは珍しく交流電流が計測できるうえ、カタログスペック上は3201を凌駕する項目[7]がある。過去に"AN/URM 505"という物品番号で、カナダ軍(陸/海/空)へ、直流6kV/交流6kVまで計測するための倍率器[5]を付属し、本革製ベルトとともに6mm厚の本革製ケースに2点ネジ留めで収めて装備品として納入されていた。付属のマニュアルには回路図と部品表もあり現場で修理可能[8]とするよう配慮されている。管理人はAN/URM 505 として完動品を5台所有している。
Model 8 mk 5およびModel 8 mk 6はイギリス・AVOmeter(当時。現在はMeggerの一部門)がかつて製造したアナログテスタである。AVOmeterは世界で初めてテスタ(マルチメータ)を発明した企業で、社名のAVOは電流の単位であるAmpere、電圧の単位であるVolt、抵抗の単位であるOhmの頭文字を連ねたものである。その出自から性能は極めて高く、電圧回路の内部抵抗は直流20kΩ/V、交流2kΩ/V、測定値表示用アナログメータは37.5µA(2.667kΩ)であるにもかかわらず、管理人が保有するどのアナログテスタよりも高精度な、直流で誤差1%、交流で誤差2%を誇る。製品も他社では見ない特徴的なもので、他社なら共有している直流と交流のレンジ切替ロータリースイッチが独立して2個、抵抗測定時のゼロ点校正用ボリュームも3レンジ毎に独立して3個、それぞれ備えている他、抵抗値測定用電源が単一電池1本([×1Ω]・[×100Ω]レンジ用)に加え、高抵抗値測定([×10kΩ]レンジ用)に特殊な15V電池(B154)を使用せねばならないが、それを差し引いても常用するに値する。ご多分に漏れず、これらはイリギス王立軍(陸/海/空)に採用されており、管理人はイギリス政府官給品であることを示すブロードアローとNATO Stock No. 6625-99-650-2822が付与され"Multimeter Set No.1 mk 3"として納品された完動品であるたModel 8 mk 5が1台、市販の完動品であるModel 8 mk 6を2台保有している。
なお、JMU-Q1AN/URM 505Multimeter Set No.1 mk 3 など軍組織からの放出品は、管理が徹底されていたからか、経年を考慮しても、品物の状態が極めて良好(ほぼ新品)[9]である。
GBW-361TRは秋月電子通商八潮店の屋外にジャンク品として投げ売りされていたため2個購入した(うち1個は完全に壊れていた)が、本体の形状や中身、機能、使い勝手はYX-361TRと全く同じ(中国製の違法コピー)である[10]
3478Aは上述のディジタルテスタを設置型にしたもので、一般にはディジタルマルチメータ(DMM)と呼ばれるが、機能はディジタルテスタと全く同じ。分解能は3½〜5½桁とディジタルテスタより高精度だが、使用には商用電力が必要なため可搬性は無い。製造から30年経過している(1987年製)ものの計測精度は保たれており、定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけて、テスタのリファレンスとして購入した。ホビーユースでも有れば便利だが、新品を定価で買ってまで揃える必要は無く、高精度アナログテスタで充分事足りる。
オシロスコープ 465B (Tektronix)
2235 (Tektronix)
CS-4135A (TEXIO)
プローブで触れている2点間の電位差を時間経過と共にディスプレイに描画する。
交流信号の波形を観測するためには必須の計測機。上述のテスタ同様、オシロスコープにもディジタル化の波が来ているが、ディジタルオシロは、プローブで電位差を検知後、演算してからブラウン管もしくは液晶ディスプレイにドット描画で近似表示させるという動作のため、正確な波形が取れないうえにリアルタイム表示を望めないという決定的かつ致命的な欠点があるので、管理人が所有しているのは旧来からのブラウン管に陰極線で直接表示するアナログオシロのみだ。
アナログにしろディジタルにしろ、計測・描画できる上限周波数の高低で販売価格は桁が2〜3個違うぐらい幅広いが、新品にしろ校正済中古にしろ、国内で買うより海外からeBayで買うほうが圧倒的に安い。
作業机にはメイン機の465Bを置き、バックアップ機として2235を控えているが、これらはeBayで海外から修理・校正済の中古を購入した。この2台は上限周波数が100MHzという同じスペックだが、1979年製の465Bが完全ディスクリート回路で組まれており重量も11kgあるところ、1982年製の2235はほぼ全てがIC化され重量も5kgに半減しているところに、この3年間での高周波回路用ICに起きた劇的な変化が窺われる。第2バックアップ機のCS-4135Aは秋葉原で投げ売りされていた新品。上限周波数が40MHzであるにもかかわらず、投げ売りでの購入価格が、eBayで買った上述の2台の合計購入価格をも上回っていたことは指摘しておくべき事実だろう。
実験用直流安定化電源 6226B (Hewlett-Packard)
U8001A (Agilent)
家庭に引き込まれている商用交流電力を、実際の電子回路で使用する直流電圧Vに変換した直流電力を出力する。
比較的簡単に設計・自作でき、秋月電子通商をはじめとする様々なショップから組立キットも出ているが、かつては気の利いた小学生の夏休み工作の定番だった。自作する際は出力電力に応じて放熱を考慮することが肝要となる。
6226Bは可変電圧範囲0〜50V、最大出力1.5Aで、正面にアナログ電圧計兼電流計が1個実装されている。U8001Aは可変電圧範囲0〜30V、最大出力3Aで、液晶ディスプレイによるディジタル電圧計・ディジタル電流計を1個ずつ独立して実装されている。
ファンクションジェネレータ
(標準信号発生機)
AFG-2125 (GW Instek) 周波数/波形/出力電圧を任意に変更した交流電圧Vを生成する。
例えば〝周波数1MHzの搬送波に周波数1kHzの正弦波を振幅変調した交流電圧を最大振幅0.1Vで出力する〟といったことができる。機能により価格はピンキリで、これも秋月電子通商をはじめとする様々なショップから組立キットが出ている。
AFG-2125は周波数カウンタも兼ねている。
インピーダンスブリッジ
(ユニバーサルブリッジ)
4260A (Hewlett-Packard)
12K (三田無線研究所)
1300 (三田無線研究所)
M1 (三田無線研究所)
M2 (三田無線研究所)
M1D (三田無線研究所)
D1S (三田無線研究所)
交流電圧で抵抗R/静電容量Cとその損失係数D/インダクタンスLとその効率Qを計測する。
テスタは直流電圧での計測なので、交流回路で使う素子ならば交流電圧で計測するインピーダンスブリッジに精確さで勝てない。コンデンサの静電容量抜けを確定させるには必須。既に廃業してしまった三田無線研究所製やHewlett-Packard製が有名。1台あると便利。
三田無線研究所製としては、B5判サイズのミニブリッジM1Dから大学や企業の実験室で使う精密計測用の大型筐体1300まで様々ある。計測する交流電圧の周波数は、内蔵されている発振機の1kHzであることが多いが、外部から発振機入力を許している(その場合は上限周波数が決められている)機種もある。
実験机には、操作が簡便なので、メイン機として4260Aを常置している。4260Aはバックアップ機も含め2台保有しているが、両台とも校正済である。精密計測には1300を使うが、それも含め三田無線研究所製のものは全て校正済である。
LCRメータ 4332A (Hewlett-Packard) 交流電圧で抵抗R/静電容量C/インダクタンスLを計測する。
交流電圧の周波数は、内蔵されている発振機の1kHzだが、外部からの発振機入力を許している。
インピーダンスブリッジで測るほどでもない簡易計測として、テスタと同じ感覚で使うことが多い。本機はアナログメータ指示である。
ディップメータ WB-200 (三田無線研究所)
DMC-230S2 (三田無線研究所)
DMC-50 (三田無線研究所)
高周波信号を印加して、共振回路やアンテナの共振周波数foを計測する。
測定対象回路と共振すると高周波信号の発振強度を示すアナログメータ(高精度直流電圧計)がディップする(落ちる)ためディップメータと呼ばれる。従って、高周波信号の発振強度を示すメータがディップした時の発振周波数(の読み)が共振周波数foとなるが、このときディップメータが発振している高周波信号の周波数の読みや設定がWB-200のようにアナログ式の円盤とDMC-230S2DMC-50のように7セグメントLEDによるディジタル表示形式の二種類ある。ファンクションジェネレータの代替として正弦波発振機にも使える。
昭和初期に日本のアマチュアへディップメータを紹介した三田無線研究所製が非常に有名であり、オークションサイトでは異常な高値で取引される。ちなみに三田無線研究所では発振回路を構成する素子で呼び方を変えており、真空管の場合はディップメータ、トランジスタとFETのアナログ式はトランスディッパ、トランジスタとFETのディジタル表示形式ディジタルディップメータとした。これに従うと管理人が所有する機種はトランスディッパとディジタルディップメータになるが、世間一般では後二者であってもディップメータと呼んでいるのが実状であるため、本項はそれに従っている。
これもかつてはアマチュアが自作する計測機の定番だったが、発振周波数をリニアに変化させるために必須の部品であるエアバリコンが製造されなくなった現代では、自作するのが難しくなりつつある。
標準LC 標準L (三田無線研究所)
標準C (三田無線研究所)
計測機を校正したり正確さを確認するために作られた、温度や湿度がある程度振れても数値が変化しない、高精度なコイルとコンデンサ。
高精度な抵抗は比較的簡単に電子部品屋やジャンク屋で購入できるが、コイルとコンデンサは計測機ベンダが特殊な製法で少数しか製造しておらず入手性が悪い。
Qメータ 4342A (Hewlett-Packard)
4343B (Hewlett-Packard)
MQ-161 (目黒電波測器)
651 (三田無線研究所)
高周波信号用コイルの実効インダクタンスL^とその効率Q、実効容量C^とその効率Qを計測する。
インピーダンスブリッジでも計測(もしくは算出)できるが、インピーダンスブリッジでは測定する周波数が上述のとおり1kHz決め打ちなものの、Qメータではそのコイルが実際使われる周波数の高周波信号で計測できるうえ、Qの値をメータで直読できる。Hewlett-Packard製と目黒電波測器製と横河電機製が有名である。管理人が所有している4台はいずれもアナログメータ指示である。
メイン機は4342Aで、筐体が大きいため作業机に常置している。第1バックアップ機はMQ-161、第2バックアップ機は4343B、第3バックアップ機は651だが、4343BはなぜかHewlett-Packardの公式カタログに掲載されていない。
補助線輪 ML-2600 (目黒電波測器) Qメータと組で使用することで、測定対象デバイスのインピーダンスZや誘電率ϵおよび誘電正接tanδを算出もしくは測定するための専用オプション線輪(コイル)。
測定周波数帯毎に分かれており、高周波数帯に行くほどコイルのインダクタンスは低い。各コイルは測定時に外部からの高周波信号で誘電されないよう金属製のケースに収められている。専用オプションであるため、あるQメータ用の補助線輪を他のQメータでは使用できない。
ML-2600MQ-161専用で、測定周波数帯毎に14個(ML-2601〜14)に分けられた補助線輪のセットである。
あくまでQメータのオプションパーツであるため中古市場に出回るのも稀で、オークションサイトでもQメータ本体より高値で取引されることが多い。管理人はMQ-161とML-2600のセットが著しく安価で出品されていたのを見かけたので購入した。
交流電子電圧計
(バルボル)
400FL (Hewlett-Packard)
LMV-181B (リーダー電子)
テスタでは計測できないµV/MHz単位の交流電圧Vを計測する。
単純な交流電圧計ではなく、微小交流電圧を増幅してから計測、アナログメータで表示する。真空管による増幅回路が実用化されたときに成立した歴史ある計測機で、登場当初は真空管電圧計と呼ばれていたため、日本国内では英語に訳して(Vacuum-Tubed Voltmeter)さらに略した〝バルボル〟とも呼ばれるが、さすがに現代は半導体で増幅するものを新品で購入できる。
メイン機である2台の400FLは計測範囲が100µV〜300V/20Hz〜4MHz、バックアップ機のLMV-181Bは計測範囲が150µV〜500V/5Hz〜1MHzである。後者は新品が定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけたので購入した。
低周波発振機
(シグナルジェネレータ)
3310B (Hewlett-Packard)
LAG-120A (リーダー電子)
CR-2 (三田無線研究所)
概ね上限数MHz程度の正弦波もしくは矩形波Vfを発振する。出力電圧をdB単位で絞れることが多い。
これも実験用直流安定化電源と同様、比較的簡単に設計・自作できるうえ、秋月電子通商をはじめとする様々なショップから組立キットも出ているため、気の利いた小学生の夏休み工作の定番である。LAG-120Aは新品が定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけて購入したが、現代でも新品が購入できる。
周波数カウンタ
(計数型周波数計)
5303B (Hewlett-Packard) 発振機や発振回路から発生している正弦波もしくは矩形波の周波数foを計測する。
これもテスタ同様、アナログ表示とディジタル表示があり、厳密には前者が周波数計、後者が計数型周波数計と分別されるが、現代ではさすがにディジタル式が主流だ。これも実験用直流安定化電源や低周波発振機と同様、秋月電子通商をはじめとする様々なショップから組立キットが出ているものの、高周波を扱うため、組立キットで自作しても失敗する可能性が高い。新品で購入すると驚くほど高価なので、校正済中古品を購入するのが無難だ。
5303BはDC〜525MHzまで計測可能。
スペクトラムアナライザ 8590A (Hewlett-Packard) 複数の周波数を含む信号を、横軸を周波数f、縦軸を電力Wまたは電圧Vとする二次元グラフ化してディスプレイに描画する。このとき、周波数ドメインか時間ドメインを選択できる。
扱う信号の実態や設計・製作したフィルタ回路の性能を一瞥するには便利な計測機。低周波であろうと高周波であろうと、測定できる周波数帯が広ければ広いほど高価であり、アマチュアユーザは中古品を購入するのが一般的だが、新品を定価で購入するには宝くじに当たらなければならない。定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけたので購入した。
トラッキングジェネレータ 8444A (Hewlett-Packard) スペクトラムアナライザで計測している周波数と同じ交流信号を連動して生成・出力する。
「トラジェネ」と略されて呼ばれることが多い。ラッキングジェネレータの出力信号を被測定回路に入力し、被測定回路の出力をスペクトラムアナライザへ入力することで、被測定回路の周波数応答・反射損失などを含む伝達特性が計測できる。高価なスペクトラムアナライザはトラッキングジェネレータを内蔵しているが、上記8590Aはトラッキングジェネレータを内蔵してないため本機が必要である。スペクトラムアナライザ同様、トラッキングジェネレータも発振できる周波数帯が広ければ広いほど高価となり、アマチュアユーザは中古品を購入するのが一般的で、新品を定価で購入するには宝くじに当たらなければならない。定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけたので購入した。
トランジスタアナライザ CT446 (AVOmeter) バイポーラトランジスタのコレクタ漏れ電流Iceo/コレクタ-エミッタ間電圧Vceo/エミッタ接地回路での交流電流増幅率hfe/直流電流増幅率hFE/雑音指数NF/ベース-コレクタ間ターンオーバ電圧VTを計測する。
現代ではPICマイコンでお手軽に計測できるトランジスタアナライザ(半導体テスタ)が出回っているものの、NFが計測できるものは半導体ベンダや機器開発ベンダが導入するような3桁万円以上する高級機にしか無い。
CT446は先述のAVOmeterが1966年にイギリス軍向けに製造したもので、本体外装にはイギリス政府官給品であることを示すブロードアローを含む銘板が貼られており、内部は全てアナログ回路だけで構成されている。測定項目にわざわざ独立して『コレクタ漏れ電流Iceo』があるということは、これが大きい(と性能が落ちる)ことで有名なゲルマニウムトランジスタが計測のメインターゲットとして考えられていることが判る[11]。なお、NFは1kHz正弦波入力時に0dB〜+40dBの範囲内で計測できる。
半導体カーブトレーサ 576 (Tektronix) トランジスタ/FET/ダイオード等の半導体へ電圧Vin/電流Iinを入力した際の出力電圧Vout/電流Ioutを表示する。
工学部の大学生に課される必修実験のレポートなら測定値を方眼紙にプロットさせ自在定規でグラフを手書きさせるであろう、電子回路の教科書に載っているようなトランジスタのVCIC特性等、いわゆる静特性を即座に目視で確認できる。詳細な仕様が明らかではない旧ソ連製ゲルマニウムデバイスの特性を調べるにはもってこいだが、いかんせん大きく重い(30kg以上ある)。eBayで海外から校正済の中古を購入したが、この重量ゆえ、輸送で一悶着あったのも良い思い出である。
昨今はPCにPICマシンとしてUSBで接続し、結果をアプリケーションソフトで表示させるものが大半だが、なぜかWindows系OS(しかもwineでエミュレートできないWindows .NET frameworkが必須)にしか対応しておらず、PCのOSとしてはLinuxしか存在しない拙宅では使えないために専用機を導入した…と言えば聞こえは良いが、つまるところ〝管理人が面白そうだと思ったから買った〟だけで、ホビーユースではほぼ不要かもしれない。でも面白い。
歪率計 333A (Hewlett-Packard) 増幅回路やフィルタ回路など被測定回路に対して正弦波を入力し、出力された波形の高調波歪Dの有無を計測する。
実態は〝高精度正弦波発振機+BEF+交流電子電圧計〟で、測定しようとする周波数を正弦波発振機で発振させて被測定回路に入力、その出力を、測定周波数と同じ周波数に対するBEFを経由させた後に交流電子電圧計で計測する。よって、交流電子電圧計の針が振れない=歪が無いほうが被測定回路が高性能であると判定される。オーディオアンプにしろ無線機にしろ、全周波数帯で増幅回路やフィルタ回路がディジタル化され、より高精度に計測できるスペクトラムアナライザが普及した現代では絶滅危惧種のような測定機である。
校正済中古品で購入した333Aの計測周波数帯は5Hz〜600kHzのため、低周波増幅回路以外にも、455kHzのみを増幅するスーパーヘテロダインAMラジオの中間周波増幅回路の性能を検査できるが、そんなのは自己満足でしかなく、ただ単に管理人が面白そうだから買っただけで、ホビーユースではほぼ不要であろう。
プレシジョンDCキャリブレータ
(直流標準電圧電流発生機)
2554 (横河電機) 計測機を校正するための精確な直流電圧V・直流電流Iを生成する。
上述の実験用直流安定化電源と異なり、設定した電圧もしくは電流の値から出力できる電流・電圧は非常に小さい。所有しているテスタ等が示す値が精確さを確認する。オークションサイトに出品されていたのを見かけたので〝管理人が面白そうだと思ったから買った〟のだが、ホビーユースでは若干必要かもしれない。
携帯用直流電流計・電圧計 2012 (横河電機) 〄規格「JIS C 1102-2 直動式指示電気計器 第2部:電流計及び電圧計」で〝0.5級(誤差±0.5%)〟に適合する、アナログの直流電圧V・直流電流I計。
上述の〄規格ではアナログ電圧計には精度により級数が規定されており(高精度順に0.05級→0.1級→0.2級→0.3級→0.5級→1級→1.5級→2級→2.5級→3級→5級)、これに倣うと2012の精度は中程度となるが、ホビーユースでは充分実用になる。ちなみに、先の級数に当て嵌めると、学校の理科室にある備品の電圧計や電流計は2.5級(誤差±2.5%)、高精度アナログテスタは概ね3級〜5級(誤差±3〜5%程度)となる。
電流計とは、電圧計に並列に低抵抗を挿入し、その抵抗の両端の電圧を電流値として読むため、電圧計としての性能が重要となる。故に、電圧計は電流計を兼ねることができる。本機は電圧計として50mV/3V/10V/30V/100V/300V/1000Vの7レンジ、電流計として1mA/3mA/10mA/30mA/100mA/300mA/1A/3A/10A/30Aの10レンジが設定できる。名称には携帯用とあるものの、大きさは260mm×180mm×120mm、重量は3kg弱ある。
ホイートストンブリッジ 2768 (横河電機) 未知の抵抗器を含む4つの抵抗器をブリッジ配置し、キルヒホッフの法則から中間点の電位差を測定することで、未知の抵抗器が持つ精確な抵抗Rを計測する。
内蔵している測定用の既知の抵抗器が高精度なため、測定機の校正にも使える。定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけ、〝管理人が面白そうだと思ったから買った〟だけで、ホビーユースではまったく不要だ。
直流電位差計 2723 (横河電機) 既知の電圧Vrefと比較することで、電流を流さずに、未知の電圧Vを計測する。
上述のホイートストンブリッジを応用したもの。これも定価と比して著しく安価でオークションサイトに出品されていたのを見かけたので〝管理人が面白そうだと思ったから買った〟だけで、ホビーユースではまったく不要である。

脚注

  1. 時々「現代ではテスタの新製品が開発されるのはほぼディジタル方式のみとなったために、アナログテスタの開発ノウハウを消失し始める → アナログテスタを構成する部品(特にアナログテスタ向け高精度直流電流計と低抵抗値向け巻線抵抗器)が製造されなくなる → 正規の部品が揃えられなくなり、代替部品で構成するも、当然ながら品質や性能が全盛期より落ちる → アナログテスタの新製品が開発されなくなる という負のスパイラルに陥った。故に、アナログテスタを買うなら、現代の新品よりも、遅くとも1980〜90年代の中古品を買って、自分で修理・校正したほうが良い」という話を聞く。一方で「これは海外の状況を指してるだけ。日本国内では三和電気計器株式会社や株式会社西澤電機計器製作所日置電機株式会社など複数企業がアナログテスタを開発・製造してるから、当面は問題無い」という話も聞く。両極端の話を聞いた際は事態が悪化する方を優先して考慮することにしている管理人は、「何もかもがディジタル化されている現代では、いずれアナログテスタの存在が風前の灯になるのは必定。よって、新品・中古品問わず、高品質なアナログテスタは率先して複数買い込んでおくべきだ」としている。
  2. 市販品の3201に添付されているマニュアルの73.1.10,000(A) 版では「なお,本回路計は,日本工業規格 JIS C1202“回路計”A級に適合するJISマーク表示許可製品です。」と強調も含め明記されているが、最終版である 2014.7 9 版では、これに類する表記は無い。
  3. 市販品の3201に添付されているマニュアルには静電気に関する注意事項が一切記載されてないものの、3201で組み上げられたJMU-Q1 に添付されているマニュアル「回路計 JMU-Q1 取扱説明書 (昭和47年12月)」には「第2章 取扱法」「第3節 普通状況下の取扱い」「2. 測定前の準備」で「f. 測定中指示計のカバーの表面を乾いた布で拭くと,静電気のため指示が変化することがあるから注意すること。」と指示されている。当然のことながらJMU-Q1 のマニュアルの作成者は「株式会社横河電機製作所」(当時)と明記しているのだが、なぜ3201に添付するマニュアルに反映・追記しなかったのか? その理由は不明である。『3201を買うような一般ユーザなら、そんなこたぁ知ってて当然だろ』ということなのかもしれない。
  4. 方々で誤記が散見されるが「防水性」ではないことに注意。JMU-Q1 に添付されているマニュアル「回路計 JMU-Q1 取扱説明書 (昭和47年12月)」でも「第1章 総説」「第1節 概説」「2. 目的および用途」で「本器は蓋をした状態において防滴性を有する。」と明記されている。防衛省でいう防滴性とは「防衛庁規格 電子機器の運用条件に対する試験方法 NDS C 0110の「3.9 防滴試験」に適合した装備品を指す。この防滴試験は〄規格「JIS C 0920 電気機械器具の外郭による保護等級」にある「防滴Ⅰ形」および「防滴Ⅱ形」より試験条件が厳しいものの「防雨形」ほどではない。
  5. 5.0 5.1 JMU-Q1AN/URM 505 は、軍用通信機器で使われている高電圧な真空管の回路を計測するため、納入企業が既に開発・販売していた3201635という市販品に、要求仕様を満たす倍率器を付属して計測範囲を拡張したものである。なお、[DC 6kV] というレンジ設定が軍用テスタの世界標準かどうかは不明である。
  6. JMU-Q1という同一物品番号で調達・納品されているはずだが、手許の2セットの間には微妙な差がある。添付されているマニュアル「回路計 JMU-Q1 取扱説明書 (昭和47年12月)」にある表記に従うと、〝回路試験機本体〟をアルミダイキャストケースに嵌め込むための〝パネル押え板〟が、一方では3201と完全に分離しているが(市販品の3201をアルミダイキャストケースに納めてパネル押え板で上から押え込んでいるだけ)、もう一方では3201本体ケースそのものがパネル押え板と一体化した特注品であったり、〝パネル押え板を止めているネジ〟が、一方ではふつうのプラスネジ6本だが、もう一方は右下の1本だけが特殊なネジ頭になっており、5ページの「第1図」で「接地端子」と説明されていたりする。なお「接地端子」を使用する場面として「第2章 取扱法」「第3節 普通状況下の取扱い」「4. 直流電圧6,000Vの測定方法」で「b. 危険防止のために適当な接続導線を用いて,接地端子を接地する。」と指示されている。
  7. マニュアルに記載されている許容差が、635HVでは直流電圧・電流は±1.25%、交流電圧・電流は±2.25%だが、3201では直流電圧・電流が±2%、交流電圧は±3%である。従って、カタログスペック上は635HVが〄規格適合の3201を上回っていることになる。
  8. カナダからの輸入直後にプレシジョンDCキャリブレータで機能チェックをしたところ、1台の [DC 0.3V/DC 60µA] 共用レンジでのみ電圧リークを検知し計測不可状態の不良品であることが判った。マニュアルにある回路図を当たると、[DC 0.3V/DC 60µA] 共用レンジの基準抵抗器が、本来833Ωであるべきところ1.21MΩとなっていた。経年劣化による抵抗器のオープン故障と判断し、新品の±1%精度½Wの金属皮膜抵抗(820Ω+12Ω+1Ωの直列)へ置換したことであっさりと機能回復した。635HVは、ユーザによるメンテナンス作業が考慮された内部構造であるうえ、マニュアルには回路図や部品表と共に「正しい分解・組立手順」と「内部部品交換後の校正手順」も記載されている。これらの要素や管理人の経験が635HVを増備させた。なお、635HVは本体だけでも重量が2kg、大きさも180mm×135mm×95mmという分厚さを誇る。
  9. 真偽は不明だが、品物が良い理由の噂として、「ICやLSI化した現代の軍装備電子機器は、もし故障しても現場の兵卒では修理できず、製造元へ依頼せざるを得ないため、テスタを使用する場面が激減した(から品物が新品に近く、コストを掛けてまで高精度アナログテスタを維持・管理することが無意味となったので放出した)」というのがある。
  10. 調べると、YX-361TR比較的少ない構成部品で必要十分な機能を備えた中級アナログテスタの完成形の1つとして有名だそうで、管理人が所有している中国製はもちろん、他国でも違法コピー品が製造され出回っているらしい。GBW-361TRに添付されていたマニュアルもYX-361TRのマニュアルを型番だけ書き換え日本語ページを削除しただけである。秋月電子通商はGBW-361TRYX-361TRの違法コピー品と知らずに仕入れたか、仕入れた後に違法コピー品だと気付いたか、詳細は不明なものの、ジャンク品として売り切ったことは確かだ。なお管理人はGBW-361TRで初めて、ジャンク品名目とはいえ〝新品なのに全機能が完全に壊れていた〟のを経験するほど低品質で、中の基板上ではなぜか全ての基準抵抗器やコンデンサ、ツェナーダイオードなどの部品が、通常では有り得ない方向に折れ曲がっていた。これの勉強代は1,800円だった。
  11. 一般にコレクタ漏れ電流Iceoは、ゲルマニウムトランジスタでは多いとmAオーダもあり回路設計で影響を考慮する必要があるが、シリコントランジスタでは多くてもµAオーダであり、アマチュアの回路設計では影響がほぼ無い。